
※こちらは2025年をもちまして、新制度である「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に変更されております。
ものづくり補助金は、革新的な新製品・新サービスの開発に取り組む中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する国の補助制度です。「ものづくり」という名称から製造業向けと思われがちですが、医療・介護・動物病院・IT・農業・飲食など幅広い業種が対象となります。補助上限額は最大2,500万円(グローバル枠は3,000万円)、補助率は小規模事業者の場合、最大2/3と、大規模な設備投資にも対応できる制度です。本記事では、制度の概要から申請の流れ・注意点まで、医療・介護・動物病院をはじめとした幅広い分野のポイントも交えて解説します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する国の補助制度です。ここでは、制度の目的と設備投資に使いやすい理由を解説します。
制度の目的と概要
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)は、中小企業・小規模事業者が生産性を高めるための設備投資を支援する制度です。働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度の導入など、相次ぐ制度変更に対応しながら成長していく事業者を後押しし、経済の活性化につなげることを目的としています。
具体的には、革新的な新製品・新サービスの開発や海外需要開拓に取り組む事業へ、設備投資などの経費を補助します。単なる設備の入れ替えや既存事業の延長は対象になりません。顧客に新たな価値を届ける、自社にとって革新的な設備投資だけが補助の対象です。「自社にとって新しいか」「顧客に新たな価値を生むか」「同業他社にまだ広く普及していない取り組みか」の3点が、対象かどうかの分かれ目です。
設備投資で活用しやすい補助金である理由
ものづくり補助金が、設備投資で活用しやすいと言われる理由は5つあります。
- 補助上限額が高く、大規模な投資にも対応できること
- 補助率が高く、自己負担を抑えられること
- 幅広い業種が対象となっていること
- 機械装置だけでなく、関連する経費が対象となること
- 申請のチャンスがおおむね年3〜4回あること
補助上限額が高く、大規模な投資にも対応できること
製品・サービス高付加価値化枠では従業員数に応じて750万円〜2,500万円、グローバル枠では3,000万円という高い補助上限額が設定されています。大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例の要件を満たした場合は、従業員数に応じて最大1,000万円が上限額に上乗せされます。
補助率が高く、自己負担を抑えられること
通常、中小企業の補助率は1/2です。ただし小規模企業・小規模事業者や再生事業者なら、2/3まで上がります。さらに、最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例の要件を満たして申請すれば、中小企業でも補助率は2/3に上がります。
幅広い業種が対象となっていること
名称に「ものづくり」とありますが、製造業に限らず、卸売業・小売業・サービス業・建設業・ソフトウェア業など幅広い業種の中小企業・小規模事業者が対象となります。医療・介護・動物病院などの分野も対象です。ただし医療・介護分野は、保険診療・介護保険が適用される事業は対象外で、自由診療など保険適用外の取り組みに限られます。設備投資を検討している事業者にとって活用しやすい補助金です。
機械装置だけでなく、関連する幅広い経費が対象となること
申請には、単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム構築費の設備投資が欠かせません。これに加えて、技術導入費・専門家経費・運搬費・クラウドサービス利用費・原材料費・外注費・知的財産権等関連経費なども、上限の範囲内で補助対象に含められます。
申請のチャンスが年3〜4回あること
令和元年度補正・令和2年度補正以降は通年募集となり、おおむね3か月ごと(年3〜4回)の締め切りが設けられています。そのため、企業の設備投資のタイミングに合わせて申請を検討しやすい点も、多くの事業者に選ばれる理由です。
ものづくり補助金の採択率と採択のポイント
ものづくり補助金の採択率は近年下がってきており、事業計画書が採否を大きく分けます。実際の採択データから、最近の傾向と、採択が難しい理由を解説します。
22次採択結果から見る採択傾向
ものづくり補助金の直近10回の推移を見ると、採択率は13次の58.0%をピークに、全体的な低下傾向が続いています。22次公募では、申請数1,552件に対して採択数582件、採択率は約37.5%となり、6割以上が不採択となる水準で推移しています。

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイトをもとに弊社にて作成
17次は「省力化(オーダーメイド)枠」のみの限定公募だったため、申請数629件・採択数185件と全体的に規模が縮小した特殊な回でしたが、18次以降は申請数が再び増加に転じました。一方で採択率は、35.8〜37.5%前後で落ち着いており、採択のハードルが一定の高さで高止まりしています。
直近の22次の内訳を見ると、製品・サービス高付加価値化枠の採択率が約38.2%であるのに対し、グローバル枠は約26.7%と大きく差が開いています。申請数・採択数ともに規模が縮小している近年の傾向を踏まえると、機械を導入するだけの単純な設備投資計画では採択を得にくくなっており、事業計画の中でいかに革新性・付加価値の向上を具体的に示せるかが、採択を左右する大きなポイントとなっています。
採択が難しいといわれる5つの理由
ものづくり補助金の採択が難しいと言われる理由は、主に5つあります。
- 採択倍率が高いこと
- 革新的な新製品・新サービス開発が求められること
- 事業計画書の作成ハードルが高いこと
- 審査項目が多岐にわたり、経営者自身による口頭審査もあること
- 高い目標要件(賃上げ等)の達成が必須であり、未達時の返還リスクがあること
採択倍率は最近2〜3倍程度で推移し、19次公募では採択率31.8%の狭き門でした。革新性の要件も厳しく、単なる機械の導入や既存サービスの改善では対象になりません。同業他社にまだ広く普及していない取り組みとなるため、自社ならではの革新性をはっきり示す必要があります。
事業計画書のハードルも高めです。現状分析から市場動向、差別化のポイントまで3〜5年分を定性・定量の両面で書き込むため、準備に相応の時間がかかります。審査も書面だけでなく、外部有識者によるオンライン口頭審査があり、ここは経営者自身が対応します。
さらに、「1人あたり給与支給総額の年平均3.5%以上増加」「事業所内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」という2つの賃上げ関連の目標が未達に終われば、補助金の返還を求められます(付加価値額の年平均3.0%以上増加も申請時の必須目標ですが、これ自体は返還の対象ではありません)。
ものづくり補助金の対象となる事業者・取り組み・対象経費

ものづくり補助金は、分野によって対象となる事業者の種類や取り組みの条件が異なります。なお全分野に共通して、単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム構築費の設備投資が必須である点を前提に、分野ごとに詳しく解説します。
医療分野
医療分野は「ものづくり補助金は使えない」と誤解されがちです。なぜそう思われるのか、理由から解説します。
対象となる事業者
株式会社や個人事業主などの中小企業者等であれば対象となり得ます。ただし、医療法人は補助対象者に含まれないため注意が必要です。また、申請時に個人事業主であっても、補助事業の実施期間中に医療法人化した場合は財産処分の扱いとなり、補助金の一部を返還しなければならないケースがあります。
対象となる取り組み
注意すべき点は、公的医療保険(診療報酬)を受ける事業は国の公金の二重支給に該当するため、補助対象外となることです。そのため、対象となるのは保険診療ではない自由診療や、保険適用外の独自サービスの開発に限られます。
たとえば、以下のような採択事例があります。
- 地域初の最先端歯周病治療でのチーム診療体制の構築
- 高精度スキャナを活用した審美・自由診療の新サービス提供
- アレルギー性皮膚炎への皮膚ケア美容施術
単純に既存の保険診療の設備を更新・増強するだけでは対象とならないため、自院にとって革新的な自由診療の取り組みであることを計画書の中で明確に示すことが重要です。
対象経費
自由診療や新たな保険外サービスを提供するために必要な医療機器(機械装置)やシステム構築費などが対象です。高精度スキャナ・デジタル機器・専用ソフトウェアのほか、導入に関連する外注費や機械の据付費なども、一定の上限内で補助対象に含めることができます。
介護分野
介護分野は、医療法人が対象に含まれない医療分野と事情が異なり、社会福祉法人やNPO法人も申請できます。対象になる事業者・取り組み・経費を順に解説します。
対象となる事業者
介護分野では、株式会社や個人事業主のほか、一定の要件を満たす「社会福祉法人」や「特定非営利活動法人(NPO法人)」も補助対象となります。幅広い運営形態の事業者が申請できる点が、医療分野と異なる特徴です。
対象となる取り組み
医療分野と同様に、介護保険が適用されるサービスに対して補助を行うことは二重支給に該当するため対象外です。補助の対象となるのは、介護保険が適用されない自費サービスの開発、業務効率化システムの外販、関連製品の開発などに限られます。
たとえば、以下のような採択事例があります。
- 受講者対応を高度化する介護研修支援サービスの開発事業
- 筆跡診断AIによる介護職員見守りクラウドの開発
- 介護事業向け生産性向上ITツールの開発と提供による事業拡大
人員補充・既存業務の効率化にとどまらず、新製品・新サービスの開発を伴う取り組みであることが採択の条件です。
対象経費
介護スタッフの見守り負担を軽減する新たなAIシステムの開発費や、外部へサービス提供するためのプラットフォーム開発費などが対象となります。機械装置・システム構築費のほか、クラウドサービス利用費・専用ソフトウェア・外注費なども、事業に関連するものであれば一定の上限内で補助対象に含めることができます。
動物病院分野
動物病院は公的医療保険の適用外です。そのため医療・介護分野のような二重支給の制限がかからず、自由診療が中心でも申請しやすい分野です。対象になる事業者・取り組み・経費を解説します。
対象となる事業者
動物病院を営む株式会社や個人事業主は、中小企業者等の要件を満たせば広く補助対象となります。獣医療は公的医療保険の対象外であるため、医療・介護分野のような二重支給の制限を受けない点が特徴です。そのため、診療の中心が自由診療であっても特別な制限なく申請しやすい分野といえます。
対象となる取り組み
動物病院では、最新の医療機器導入による高度・精密な獣医療体制の構築や、飼い主向けの新サービス提供が採択されています。たとえば、以下のような採択事例があります。
- 猫にやさしい精密診断と低侵襲治療を実現する新獣医療サービス
- 白内障手術(二次診療)で実現する地域の総合動物病院
- 地域初の歯科特化CT導入による高度獣医療体制構築
- 眼科×低侵襲×地域完結型医療体制の革新事業
ただし、同業他社に相当程度普及している取り組みは対象外となるため、地域や業界の中での差別化・革新性を計画書の中で明確に示すことが重要です。
対象経費
CT装置・超音波診断装置・電子レントゲン・集中治療室・ビデオオトスコープといった、単価50万円以上の高度な動物用医療機器が主な対象となります。あわせて、システム構築費・診断データのデジタル管理システムなど、高度獣医療の提供に関連する経費も一定の上限内で補助対象に含めることができます。
その他の業界
製造・建設・IT・農業・飲食など、幅広い業種がものづくり補助金の対象となります。業界を問わず共通して求められる要件と、対象外になりやすいケースも含めて解説します。
対象となる事業者
製造業・建設業・運輸業・卸売業・小売業・サービス業・ソフトウェア業(IT)・宿泊業・農業など、幅広い業種の中小企業・小規模事業者が対象となります。機械を導入するだけでは対象とならず、単価50万円(税抜)以上の設備投資を伴う、新製品・新サービスの開発が必須の要件となります。
対象となる取り組み
各業界において、顧客に新たな価値を提供する革新的な新製品・新サービスの開発が求められます。たとえば、以下のような採択事例があります。
- 農業技術を活用したオニテナガエビ養殖の高付加価値化事業
- 赤外線乾燥導入による有機米小分け商品化事業
- 赤外線とレーザーのダブル点検によるドローン外壁点検サービス
- AIによるHP・LP制作とSNS連携を統合した集客システム
- 急速冷凍・自動包装ライン導入による冷凍ラーメンの全国展開
- 高精度加工用マシニング導入でEV化等の高精度金型等へ新規参入
IT・ソフトウェア分野における既存の汎用的なHP制作ツールの導入や、建設・土木分野における市販のドローンを購入しただけの単純な点検サービスなどは、同業他社に相当程度普及している取り組みと判断され、対象外になるリスクがあります。製造業においても老朽化した設備の買い替えや生産能力を単純に増やすだけの設備増設は対象外です。
対象経費
事業の中心となる単価50万円以上の機械装置・システム構築費の投資が必須となります。それに伴う技術導入費・専門家経費・クラウドサービス利用費・新製品開発のための外注費・原材料費なども、一定の上限内で幅広く認められます。
ものづくり補助金の申請から採択後までの流れ
ものづくり補助金は、採択されたら終わりではありません。採択後も交付申請・事業実施・実績報告・事業化状況報告と、複数年にわたる手続きが続きます。全体の流れを3つのフェーズに分けて解説します。
第1フェーズ|申請から採択まで
GビズIDプライムアカウントの取得から始めます。電子申請に必須で、発行に1〜2週間程度かかるため、申請を決めたら最初に手配しましょう。
並行して、事業計画書と添付書類を準備します。事業計画書には、自社課題・市場環境の分析、取り組みの革新性、3〜5年の実現可能性を具体的に記載します。決算書(個人事業主は確定申告書)などの添付書類もあわせてそろえます。導入予定設備の相見積もりは、採択後の手続きを円滑に進めるために、事前取得が推奨されています。
審査は書面審査に加え、一定の基準を満たした事業者にはオンラインでの口頭審査が行われます。口頭審査は経営者本人が対応する必要があり、コンサルタントの同席は認められません。
採択後は、事務局が開催する説明会(動画視聴等)への参加が義務です。未参加の場合、採択が自動的に取り消されるため注意してください。
第2フェーズ|採択後から事業実施まで
採択後、原則2か月以内に交付申請を行います。事務局が経費内容を精査し、正式な交付決定が通知されます。精査の結果、減額や対象外と判断される場合もあります。
交付決定後は、定められた補助事業実施期間内(申請枠により交付決定日から約10〜12か月以内)に、発注・納入・検収・代金の全額支払いまで完了させる必要があります。スケジュールには、決定後すぐに着手しましょう。
第3フェーズ|完了から受給・事業報告まで
事業完了後、速やかに(完了から30日以内など)実績報告書を提出します。書類確認・実地検査を経て補助金額が確定し、請求手続き後に指定口座へ振り込まれます。
受給後も、事業完了日の属する年度の翌年度から5年間、毎年の事業化状況報告(事業の進捗・知的財産の取得状況・賃上げの達成状況など)が義務づけられています。報告を怠ると補助金の返還を求められる場合があります。
また、申請時に設定した目標(付加価値額の増加・賃上げ要件)が未達の場合も返還義務が生じます。
ものづくり補助金の申請時・採択後の注意点
ものづくり補助金では、申請時と採択後それぞれに、知らないまま進めると補助金が受け取れなくなるリスクがあります。事前に把握しておくべき注意点を、申請時・採択後に分けて解説します。
申請時の注意点
申請時の注意点は、主に5つあります。
- GビズIDプライムアカウントは最優先で取得する
- 締切直前の申請は避け、事前に下書きを準備する
- 添付書類のファイル名・形式を厳守する
- 他の補助金との重複を確認し、正確に申告する
- 経営者自身が事業計画の内容を深く理解しておく
申請はすべて電子申請システムで行われるため、ログインに必須の「GビズIDプライムアカウント」を最初に取得しておきましょう。発行まで1〜2週間程度かかるため、早めの手配が肝心です。また、締切直前はシステムが混雑しエラーが発生しやすいため、公式の参考様式で下書きを作成し、余裕を持って申請することをおすすめします。
添付書類は指定のファイル名・PDF形式を厳守し、空白ページの混入がないか事前に確認してください。他の補助金との経費の重複は認められないため、過去の受給実績・応募状況を正確に申告することも必須です。また、口頭審査では経営者本人が質疑応答に対応する必要があります。外部支援者に計画書の作成を依頼する場合でも、内容を自社の戦略として十分に理解しておくことが不可欠です。
採択後の注意点
採択後の注意点は、主に6つあります。
- 交付決定前の発注・契約は認められない
- 補助金は後払いのため、資金繰り計画が必要
- 支払いは原則「自社名義の銀行振込」のみ
- 目標未達の場合、補助金の返還義務が生じる
- 事業完了後5年間、毎年の状況報告が義務づけられている
- 補助金で購入した設備の無断処分は禁止
採択後に注意すべきは、正式な「交付決定」の通知を受ける前に発注・契約・購入を行ってはならない点です。交付決定前の経費は、いかなる理由があっても補助対象外となります。また、補助金は設備投資の支払い完了後に振り込まれる「後払い(精算払い)」のため、それまでの費用は全額自己資金や融資等で立て替える必要があります。受給までの資金繰り計画を事前に立てておきましょう。
支払いは補助事業者自らの名義による銀行振込のみが認められ、現金払いやクレジットカード払いは原則として対象外です。さらに、事業計画で掲げた賃上げ要件(1人あたり給与支給総額の増加と事業所内最低賃金の引上げ)が未達に終われば、補助金の返還を求められます。実現可能な目標を設定しましょう。
受給後も5年間の状況報告義務があり、報告の怠りや虚偽も返還の対象となります。補助金で購入した単価50万円以上の設備は処分制限期間内に無断で譲渡・廃棄することができず、処分が必要な場合は事前に事務局の承認を得てください。
まとめ|ものづくり補助金を活用して事業の可能性を広げよう
ものづくり補助金は、新製品・新サービスの開発に向けた設備投資を支える制度です。申請から受給後まで手続きは長く、確認すべき点も多くあります。それでも全体の流れと注意点を押さえておけば、慌てずに準備を進められます。まずは自社の取り組みが「革新的な新製品・新サービスの開発」にあてはまるか、公募要領で確かめるところから始めてみてください。

中小企業診断士 獣医師